A fable of a fable ‹Wildcat›
寓話の寓話〈ヤマネコ〉
2021-2025
Wood, Inkjet print on paper, Inkjet print on transparency film, remodeled toy train, AA battery
Dimension variable
2021-2025年 木材、紙にインクジェットプリント、OHPフィルムにインクジェットプリント、改造したプラレール、単三電池 サイズ可変
《寓話の寓話(A fable of a fable)》は、スリット・アニメーション(ストライプ状のスリットを動かすことにより絵を動かす技法)によって、ものがたりを語る装置・空間を創出するプロジェクトである。古典的なスリット・アニメーションの技法に 3D プリンティングや超スローモーターなどの現代の技術を組み合わせ、ものがたりに満ちたひろやかな空間を、映像的⾼解像度ではなく絵画的⾼精細で実現する。複数の⾃⾛スリットがドローイングの前をゆっくりと通過すると、いくつもの時空間が描かれたドローイングがばらばらに動き出す。ドローイングの内容は、グラデーションのように広がる、⼀⽅向ではない、枝分かれした時空を⽣き死にするヤマネコのものがたりである。 始まりもなく、終わりもなく、複数の時空間でばらばらに様々なことが起こり、それでいて全体がつながっている。全体を眺め渡すだけでも、個別に起こっている事象を追いかけるだけでも、ものがたりそのものに辿り着けない。このものがたりの構造が、インスタレーションの物理的な構造と重なっている。
このプロジェクトは当初、アジア圏の伝承に多く登場する⻁の多彩な個性を基調にそれらを猫に描き換えて、現代の寓話として蘇らせる試みだった。2021年、そのリサーチの⼀環でオーストリアと周辺各国のヤマネコの⽣態の変遷を辿ってみると、ヤマネコを巡る事実群の⽅がよほど寓話的な⾯⽩さに溢れており、それらを寓話へ昇華することが⽬標になった。森林政策等、⼈間の都合により越境し⼊植者さながらに散らばっていったヤマネコの変遷を辿ることで、まるでリサーチに来た⾃分⾃⾝が猫に化かされたように物語の中に導かれていた。物語を追いかけているうちに知らぬ間に⾃分が誰か別の存在の中で⽣き直すような、たくさんの⽣と死をともに⽣きる感覚を表現したい。未知の事柄の声を聴くことで社会的・個⼈的閉塞感を越えようとした、その軌跡が表れ出てくることを⽬指している。ありとあらゆる境界を越えるための「壁抜け」の⽅法を探すことが、期せずして⼤きなテーマとなった。
《寓話の寓話》は、「ものがたり⾃⾝がものがたりを物語る」装置や空間を作り出す試みでもある。 ⼀般的には物語とそれを伝えるメディウムは別のものであり、 物語は映像機器やコンピュータなどの機材によって、あるいは書物や⼈の声によって「再⽣」されることが普通である。こうした⼀般的な物語とメディウムの関係性とは違う、物語⾃体がメディウムでもあるものがたりを、《寓話の寓話》プロジェクトは⽬指している。そしてこのプロジェクトは、映像機器の限界を超えた、本物の「動く像」を現出させようとする挑戦の途上にある試みでもある。 

タイトルの《寓話の寓話(A fable of a fable)》には、「始まりも終わりもなく常に過程であり、構造全体の中⼼もなく、果てしないひろがりをもったひとつのものがたりを写し取ろうとした、あるひとつの⼩さくて私的な試み」という意味が込められている。
A fable of a fable ‹Wildcat›
2021-2025
Wood, Inkjet print on paper, Inkjet print on transparency film, remodeled toy train, AA battery
Dimension variable
寓話の寓話〈ヤマネコ〉
2021-2025年 木材、紙にインクジェットプリント、OHPフィルムにインクジェットプリント、改造したプラレール、単三電池 サイズ可変
Technical Cooperation: yang02
With support from NTT InterCommunication Center [ICC]
Exhibition
Taoyuan International Art Award, Taoyuan Arts Center, Taoyuan, Taiwan
March 26th-May 18th, 2025  
Organized by Taoyuan Museum of Fine Arts, Taoyuan, Taiwan
Award
Taoyuan International Art Award, Honorable mention, Taoyuan Museum of Fine Arts, Taoyuan, Taiwan, 2025
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